韓国政府研究所による検証

 

きっかけは民間療法

中国と同じく漢方の「先進国」である韓国では、糖尿病に対して色々な民間療法がありました。その中に桑の葉や蚕などを利用した民間療法があります。

李朝時代の一五九七年にホ・ジュンによって「東医宝鑑」(とういほうかん)が書かれ広く流布しました。中国や日本にも伝わり、日本では江戸幕府の宮版をはじめ多くの版を重ねました。

「東医宝鑑」には蚕の効能について色々と記されています。

蚕のさなぎの液汁は虫さされや女性の陰部の腫れに効き、蚕を炒めて粉末にしたものは中風、半身不随、神経症などに効くと記されています。

中国では蚕の糞を入れた枕が珍重されてきました。この枕を使えば快眠が得られ、頭痛、リュウマチ、脳卒中などにも効くと伝えられています。

蚕の成虫である蚕蛾は性交力を高め、早漏や尿血を抑え強精効果があると記されています。

現在漢方薬局に置いてある「原蚕蛾」(げんさんが)とは蚕のオス蛾を乾燥させたものです。中国で現在売られている「仙蛾酒」(せんがしゅ)などもオス蛾でつくったお酒です。

また桑の葉は腫れ物、中風、咳などに効くと記されており、韓国では関節炎、頭痛、眼病、解熱などにも使われました。

日本でも蚕のさなぎを食する習慣がありましたが、幼虫を食べる県は長野県だけだったそうです。蚕以外の幼虫なら他の地方でも広く食用に利用されています。イナゴや蜂の子は一般的であって、そのほかにもトビゲラの幼虫であるザザムシ、カミキリムシの幼虫マゴタロウムシなどを食べる地域もあります。東南アジアではもっといろいろなものを食べます。

韓国・ソウル市内を歩いていると、大きな釜で蚕のさなぎを茹でて売っている屋台をよく見かけます。韓国では「ポンデギ」と呼びれて親しまれています。

ビールによく合うので、是非一度「ポンデギ」にもチャンレンジしてみてください。

 

韓国の蚕関連民間療法の中では、糖尿病の渇症を抑える処方として次のようなものが伝えられています。

・蚕のさなぎを煮て、その煮汁を飲む。

・蚕の繭(まゆ)二一個を煮て、その煮汁を飲む。

・蚕沙(さんしゃ)を炒めて粉にして、一日三回、七・五グラムずつ服用する。

 

韓国政府研究所の取り組み

韓国でも日本と同じように、社会文明の急速な発展に伴い、運動不足と過剰な栄養摂取によって糖尿病患者が急激に増加しています。

第二次世界大戦後、インスリンをはじめとする血糖調節薬が世界中の医療現場で役立ってきました。

しかし、それらの薬剤に対しては様々な副作用や不便さが指摘されていました。

ですから世界的にも天然活性物質の方に、多大な関心が寄せられ研究されています。

韓国でも天然の物質で血糖降下作用のあるものを探し、科学者たちが色々な物質で実験してきました。

韓国政府は一九九二年に、古医書に収録されている蚕の効能に基づいて、蚕関連産物の機能性と効果に関する科学的検証をスタートさせました。いわば民間療法の分野に科学のメスを入れたのです。

韓国政府の農業振興庁研究所とキョンフィ大学の共同研究によって、蚕粉末の成分分析、有効成分の探索、実験と臨床試験などを通して、無公害の優れた血糖降下効果が見いだされ、蚕粉末を利用した血糖降下剤の開発が始まりました。

そして一九九五年三月、ついにその優れた効果と安全性、服用量などが韓国内で正式に発表されました。

これに関しては韓国の新聞「東亜日報」、「韓国日報」、「京郷新聞」とKBSTV、MBCTV、SBSTVなどのテレビ局が一九九五年三月二十二日以降一斉に大きく報道しました。

 

各国での特許登録

蚕粉末でつくった血糖降下剤は今まで使われてきたインスリンや経口薬と違って、服用方法がいたって簡単で副作用がない上、空腹時に低血糖を起こさないというのが主な特徴です。

韓国政府では一九九五年一月に韓国内で、七月には日本で、八月には中国で特許の出願をしました。日本では「蚕粉末を有効成分として含む血糖降下剤およびその製造方法」という名称で一九九八年三月に正式に特許登録されました。(登録番号:二七五七九三七号)

特許の内容は以下のようになっています。

 

①4齢期から5齢末蚕を窒素ガスで酸化防止処理し、これを冷凍乾燥させ粉末化する製造方法と工程

②上記①の方法で作られた蚕粉末及び血糖降下剤

③上記①の方法でつくられた蚕粉末を含む健康食品

 

蚕粉末に関する特許権は、民間会社ではなく韓国政府が持っているものなので信頼性が高く、日本でもすぐに数社の薬品会社などが、韓国政府に特許実施権を求めて打診してきました。

日本では特許が登録される前から、韓国政府研究所と提携した日本の薬品会社によって、蚕粉末の機能性をアップさせるための研究が続けられました。

そして一九九八年八月に日本でも初めて蚕粉末が紹介され、糖尿病患者にお薦めの健康補助食品として脚光を浴びるようになりました。

中国でも二〇〇二年十二月に、「蚕粉末を有効成分として含む血糖降下剤の製造方法」という名称で特許登録がなされました。こうして蚕粉末は本場韓国だけでなく、日本や中国、アメリカなどの糖尿病医療関係者の間でも大きな話題となっています。

 

 

東亜日報

カイコ利用糖尿病薬開発

農振庁・キョンフィ大学チーム世界初の天然治療剤

桑の葉にも治療成分

 

 

京郷新聞

カイコの粉末で糖尿病治療

農振庁・キョンフィ大学が生薬開発

副作用なし・血糖降下