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シルク・カイコ
(健康産業新聞2007年1月17日)


シルク・カイコ全体で20億円を堅持


抗糖尿、降圧、肝機能改善、抗酸化、免疫増強、ダイエット、抗アレルギーなどさまざまな角度から有用性に関する研究が進められている「食べるシルク」。17年前に食品素材として流通して以来、9年前に登場したカイコ健食を含めた市場規模は20億円前後に上回る。商品アイテムは健康食品をはじめ、製麺、豆腐、菓子、調味料、清涼飲料水など多岐にわたり、化粧品や整髪料のほか、人工皮膚、人工血管など医療分野での導入も進んでいる。メタボリックシンドローム対策の有望素材として、認知向上と市場拡大の機会をうかがう「食べるシルク」を検証する。


抗糖尿、美容分野で市場形成進む

「食べるシルク」は、カイコ繭の絹糸を分解したタンパク質を主に利用する。養蚕の本家・中国では、古来よりカイコの繭を煎じた漢方処方があり、伝承的に糖尿病への有用性が知られていた。国内では、東京農工大学教授の故・平林潔氏が、1988年に開かれた日本学術会議蚕糸学研究連絡セミナーで、「次のバイオ素材は絹だ」と題する発表を行い、シルクの栄養学的な価値や医療分野への応用につて言及。製織工程で出る絹くずを副産物として使用するなど循環型資源としての使用価値に加え、地域の養蚕業の活性化など社会的意義の大きい素材として注目を集めた。
食品用途での事業化に初めて着手したのは、絹織物の産地として知られる京都の加悦町で、90年に第三セクター・加悦総合振興㈱を設立。従来、繊維素材だったシルクの食品化事業が推進された。
1998
年以降、「食べるシルク」は、テレビや雑誌などでたびたび取り上げられる素材となり、健康食品の商品開発の活発化。健康食品を中心に乳酸菌飲料、ヨーグルト、麺類、パン、豆腐、アイスクリーム、菓子などの用途拡大が進んだ。
シルクはフィブロン(絹繊維)とセリシンという2種類のタンパク質で構成される。「食べるシルク」に使用される原料は、絹糸を微粉砕した粉末や、加水分解もしくは酵素処理で低分子化した粉末があり、原料各社は食品用途に応じて供給している。このほか、ペプチドやアミノ酸、ゲル化物での流通もみられ、特にシルクペプチドは生理活性の高い素材として複数の企業が提案を進めている。
シルクは20種類のアミノ酸のうち、グルミタンとアスパラギン以外の18種類を含み、必須アミノ酸をすべて含有しているのが特徴。組成別ではグリシン、アラニン、セリン、チロシンの割合が高い。機能面では、シルクパウダーと、ペプチド・アミノ酸による2方向から研究が進められており、血中コレステロール低下、インスリン作用、アトピー性皮膚炎改善、肝機能改善、血圧低下作用などが確認されている。また、吸収・保湿効果や肌荒れ改善、紫外線防御、枝毛保護などへの有用性も認められており、化粧品素材として定着している。
シルク原料の絹糸を吐き出すカイコは、抗糖尿素材の桑葉を餌にしており、糖の分解酵素の働きを阻害する有用成分としてDNJ(デオキシノジリマイシン)を含む。国内ではボンビックス薬品㈱が98年、カイコを窒素ガスで酸化防止処理し、凍結乾燥させて粉末化した『ボスリン』を他社に先駆けて市場に投入。昨年は約6億円を売り上げた。シルクとカイコ健食の市場規模は、原料供給量と各社の聞き取り調査から推計すると、ここ数年は20億円前後と安定している。


メタボ対策の有望素材として再評価も


メタボ対策、新たな起爆剤へ

シルクパウダーの原料サプライヤーは20社に上がり、原料流通量はここ数年、ほぼ横ばいで推移。原料価格は国産セリシンパウダーがキロ36万円、輸入物が7.000~1万5.000円、国産フィブロインパウダーがキロ9.000円~1万1.000円、輸入物が7.000円~8.000円。また、カイコ粉末はキロ1万2.000~1万5.000円で取引されている。
シルク健食はカプセル、錠剤、顆粒、パウダーなどの形態で流通しており、単味製品が多い。複合品は桑葉、黒酢、コラーゲン、シジミ、ウコン、亜鉛など抗糖尿、美肌、肝機能強化、ダイエット素材との組み合わせが目立つ。販売ルートの9割は通販。カイコ健食は粉末とエキスが中心で7割が通販、3割が薬系・食系ルートで流通している。
シルクとカイコは、長い低迷にあえぐ養蚕業の育成・振興を目的に、農水省、民間企業、大学・研究機関など産官学共同によるプロジェクトが各地で進行している。2001年には絹、蚕、桑の多目的利用に関する産官学の情報交流を行う第三者機関「絹蚕桑多目的利用協議会(KSS協議会)」が発足。現在28会員で組織され、開発の相互協力や自主規格基準の設定など積極的な活動を展開している。「食べるシルクが業界や消費者に十分認知されているとはいえない」とする指摘が聞かれる中、シルク・カイコ素材の機能性や活用の意義などを組織的に情報発信するための拠点として、同協議会の組織力の強化とリーダーシップを望む声は多い。
「シルク・カイコは、長期的に生活習慣病予防やアンチエイジングに対応した素材として、ビジネスチャンスを広げる材料は揃っている」とする声は複数の原料メーカーから挙がっており、市場を再活性化させる起爆剤として、メタボリックシンドローム対策に焦点を当てた機能性研究の進展や商品開発に注目が集まっている。


主要企業動向

 シルクとカイコの原料サプライヤーは約20社。シルク原料は加水分解や酵素処理で低分子化した粉末タイプが主流で、ペプチドやアミノ酸、ゲル化した原料も供給されている。カイコ原料は粉末がほとんど。末端製品は約9割が通販ルートで流通され、市場規模はここ数年、横ばいで推移している。シルクは抗糖尿、美容、ダイエット対応、カイコは抗糖尿、性機能向上対応として提案する企業が多い。


ボンビックス薬品

 ボンビックス薬品㈱(大阪市中央区)は、韓国政府が所有するカイコ粉末の特許に基づいて抽出した蚕粉末を使用したタブレットタイプの『ボスリン』を他社に先駆けて1998年に発売。国内のカイコ健食でシェアトップを維持している。さらに2003年には、カイコ粉末をエキス化し、明日葉、桑葉、霊芝、杜中、ドクダミ、月見草種子油など10種類の植物エキスを配合したソフトカプセルタイプの『ボスリンゴールド』を発売。両品とも通販と薬系・食系ルートで展開し、前年比60%増と急伸している。また同社ではカイコ粉末を抗糖尿、ダイエット、性機能向上素材として原料供給する。カイコは天然飼料を用いて飼育し安心・安全な原料供給に努めている。シルク粉末は韓国向け輸出がほとんどで、前年比10%増で推移している。


ドクターセラム

 ドクターセラム㈱(東京都渋谷区)は、カイコ由来のシルクを利用したダイエット食品『セラム-シルクフィブロイン』を販売する。東京農業大学助教授の長島孝行氏と共同開発したもので、セリシンを除いた不純物を含まないシルクフィブロインタンパクのみを原料に使用。吸脂性多孔性(ナノレベル微細構造)を持ち、体内の余分なコレステロール、脂肪を吸着し排出するのが大きな特徴。乳化した状態で体外排出するので、便秘改善も期待できる。バックデータでは昨年末に、200人規模によるメタボリックシンドロームに対する臨床試験の結果を発表。中性脂肪値や血糖値、LDLHDLなど、9項目の数値改善について有意な結果が得られている。エステルートを中心に展開するほか、OEM供給も対応。形状はゼリータイプで1包み10g。防腐剤を一切使用しないレトルト包装で顧客ごとに異なるオリジナルな味の提供が可能。「味無臭なので、錠剤から固体、液体、ゲル状など、幅広い形状に対応できる」としている。


一丸ファルコス

 一丸ファルコス㈱(岐阜県本巣市)は健食用の粉末シルク原料『エディブルシルク』、化粧品用途の液体原料『シルクゲンGソルブル』など8タイプ以上のシルク原料を扱う。健食用原料は、特許製法により、シルクプロテインをシルクペプチドにしたもの。活性酸素除去作用、免疫増強作用などを確認している。同社は、セリシン、フィブロインそれぞれをラインアップし、多様なニーズに対応した原料を供給でき、ヒトでの多様なバックデータを有する点を訴求する。


キッスビー健全食

 キッスビー健全食㈱(東京都三鷹市)は、絹エキスを使用した基礎化粧品シリーズ『絹夢物語』を販売する。天然桑で育ったカイコの繭の真綿のみを使用。人工飼料のカイコのものに比べ、セリシンを豊富に含む点が特徴である。


リバソン

リバソン㈱大阪市中央区)は、シルク純度70%規格の京都産のシルクパウダー原料『丹後シルクパウダーV』と純度100%の『丹後シルクパウダー100』の2種類を供給する。消化・吸収性を高めるために、低分子化されている。グリシンやアラニンといったアミノ酸の比率が高いのが特徴。サプリメント、飲料のほか、麺類、パン、ケーキなどにも利用されている。


オノジュウ

 ㈱オノジュウ(東京都大田区)は、カイコ粉末食品『シルクパウダー』を薬局・薬店で展開している。5齢3日のカイコを窒素ガスで酸化防止処理した後、冷凍乾燥し、粉末化したもの。1999年に発売以来、着実に顧客を増やし、リピート率も高いという。


ロード21
 ロード21(東京都立川市)は、国産シルクアミノ酸を原料に用いて、健康食品をはじめ一般食品、化粧品、動物用飼料など幅広い用途で展開する。健康食品は、単味成分での商品展開が中心。一般食品では漬物、ヨーグルト、麺類、パン、豆乳などの提案を進めている。


プロザテック

 ()プロザテック(千葉県若葉市)は、シルクを酵素分解した『シルクペプチドM-500』と『シルクペプチドM-3000』、m以下の超微粉末原料『シルクパウダー(COSI)』を健康食品、ドリンク、化粧品用途などで展開している。


シルクパウダー原料、05年は微増へ

 (独)農畜産業振興機構によると、シルクパウダーの2004年国内販売量は前年比8.4%減の6万4.348㎏となった。05年計画では同1.3%増の6万5.154㎏を見込む。タイプ別ではフィブロインパウダーのシェアが95%と他を圧倒しているが、セリシンパウダーも04年が同15.9%、05年計画が12.6%と着実に増加している。食品用の需要量は、04年は同2.5%減の1万7.133㎏となったが、05年計画は同0.9%増を見込む。経口剤のシェアが高く、全体の約7割を占める。化粧品用は、04年は同16.7%減の2万5.805㎏となったが、05年計画では前年比0.4%増を見込む。ファンデーションが7割近くのシェアを占め、パウダー(16.3%)、口紅(5.2%)が続く。用途別では、ファンデーションは横ばいで推移したが、パウダーが同21.5%増と好調だった。
1 シルクパウダーの国内需給動向(kg
 
2004
2005
 セリシン
2,227
2,507
 フィブロイン
61,121
61,647
 計
63,348
64,154
 
2 フィブロインパウダーの分野・用途別の2005年国内販売状況
食 品
数量(kg
構成比(%)
化粧品(整髪量含む)
数量(kg
構成比(%)
 経口剤
12,698
73.4
 パウダー
5,100
20.6
 
 
 
 
 
 
 製麺
1,840
10.6
 ファンデーション
17,550
70.9
 豆腐
1,200
6.9
 口紅
450
1.8
 菓子
800
4.6
 石鹸
252
1.0
 調味料
240
1.3
 ローション
693
2.8
ドリンク剤
 その他
702
2.8
 その他
515
2.9
 計
24,747
100
 計
17,293
100
 整髪料
5,132