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メタボ対応の有力素材
桑の葉、市場規模60億円で推移
 (健康産業新聞2007年7月25日)

バックデータ充実、医家向けサプリの登場も


抗糖尿の代表素材として、中高年をコア層に市場を形成する桑の葉。若年層をターゲットに据え、ダイエットサプリメントとしての製品開発も活発化、市場規模は60億円を堅持している。01年には、有効成分である1-デオキシノジリマイシンが医薬品成分に分類されたことで、「含有成分の表示ができなくなった」「トクホ取得の障害になった」との声も囁かれていたが、逆に有効性が裏づけされた形となり、原料サプライヤーでは、「ブレンド素材としての引き合いが増加傾向にある」「ゼリー、飲料、菓子類など、一般食品への用途開拓の道が拓けた」とするなど、総じて好調に推移している。企業レベルでの取り組みに加え、島根県、福島県、滋賀県など、地域振興プロジェクトが進展、結実しつつあるのもを桑の葉が安定市場を形成する大きな要因だ。


■抗糖尿素材として市場に定着

 本誌調査では、桑の葉は、98年前後から健康食品としての市場を本格的に形成。市場規模は、02年に30億円に到達し、その後、「低インシュリンダイエット」「青汁ブーム」を追い風に、50億円を突破している。
 現在市場には、桑の産地で土産品として販売されている茶製品等も含めて、200種以上の桑の葉製品が流通している。形態は、茶製品(ブレンド茶含む)が5割、錠剤・カプセルが3割、青汁(顆粒タイプ含む)が2割。茶形態では、玄米、緑茶、ヤーコン、大麦若葉、ドクダミ、バナバ、クマ笹など、ブレンド茶への配合も目立ち始めている。最終商品の販社では、百貨店、薬店での不振が続くなか、「(無店舗ルート、フィットネス等での)ダイエット訴求による若年層開拓」「医家向け製品の開発による新市場開拓」に注力しており、横ばいから微増で推移。市場規模は60億円を堅持している。
 桑の葉が健康食品市場に定着した背景には、増大する糖尿病人口とそれに対する決定的な医薬品が開発されていないことにある。ただ、他の抗糖尿素材同様、“サイレントキラー”と呼ばれる糖尿病に対して、未病・予防分野の健康食品が入り込む難しさがある。桑の葉がその壁を打破できたのは、「糖吸収阻害のメカニズム」が明確にされていることにある。また、有効成分である1-デオキシノジリマイシンが医薬品成分に分類され、「含有表示ができなくなった」という障害があった一方で、桑の葉の効果が裏づけされ、追い風となったとする味方もある。


■先行する日本の桑の葉研究

 桑の葉の機能性研究において、諸外国をリードする日本。その中心となった研究の一つが、神奈川県が平成2年に立ち上げたプロジェクト「機能性食品に関する共同研究事業報告」だ。プロジェクトでは、神奈川県科学技術政策推進委員会のもと、県衛生研究所、栄養短期大学、がんセンター、農業総合研究所、蚕業センター、畜産試験場がチームを組み、当時食品としてほとんど利用されていなかった桑の葉についての大規模な研究を実施。平成5年からは、豊玉香料㈱、衛生短期大学が参画している。報告書では、抗糖尿作用、血圧抑制効果、腸内環境改善作用など、桑の葉の多機能性が確認されたことに加えて、含有成分の分析結果、乾燥方法に関する研究成果が報告されている。
 また、近年おいても、日本薬学会や農芸化学会などで、コンスタントに研究発表が行われているほか、他素材との組み合わせによる相乗効果についての研究も進展しており、㈱龍泉堂では、桑の葉とタマネギをブレンドした医家向けサプリメントの開発に成功。ミナト製薬㈱では、東北農業研究センター、東北大学、福島農業試験場などと研究コンソーシアムを形成し、研究プロジェクト「血糖値改善効果を有する桑葉の製品開発」(平成16年から3ヵ年計画)を実施し、商品開発に成功。さらに、昨年には、同研究成果をベースに、「桑葉サプリメントのヒトに対する有効性と安全性を実証する5ヵ年計画の共同研究」に着手し、トクホ取得を視野にエビデンス構築を進めている。


■桑の葉で地域振興、相次ぐ島根県がモデルケースに

 島根、福島、長野、滋賀、新潟など、桑の葉を特産物とする県や地域の取り組みが加速している。なかでも、島根県・桜江町は、有機JAS取得の桑の葉を栽培、原料・OEM供給から最終商品の販売まで、多角的な事業展開を行い、桑の葉による地域振興のモデルケース的な存在だ。桜江町で採取される桑の葉が、ポリフェノールの1種「クエルセチンマロニルグルコシド」を高含有することを確認。また、特許技術「植物の完全単細胞化技術」を有する(有)高橋慧食品研究所と技術提携することで、吸収性・機能性の向上を実現するなど、他産地品との差別化が明確な点が強みとなり、昨年実績で20tを供給、急速にシェアを拡大している。
 また、新潟県では、農業総合研究所などが「日本薬学会」で桑の葉が二糖類分解酵素を阻害することを発表し、味噌、パン、クッキーなど、桑の葉の用途開発を推進。滋賀県では、養蚕の復活を目指し、桑の葉加工食品を特産品としてPRするなど、桑の葉による地域振興を目指した動きが活発化しており、企業とのマッチングによる製品開発が期待される。


企業紹介
 桑の葉の強みは、訴求ポイントが明確な点にある。中高年向けには糖尿対応、女性の若年層にはダイエット対応商品が開発され、「飲みやすさ」「体感性の高さ」「イメージの良さ」を武器に、高リピートを誇るロングラン商品が多い。商品形態は茶製品が8割を占めるが、(桑の葉をブレンド素材として採用した)青汁タイプの製品化が増加傾向にある。今後は、抗糖尿の代表素材として認知を背景に、桑の葉を配合したメタボリックシンドローム対応サプリメントの開発が進むのは確実だ。そのため、血圧、血中脂肪の観点からのバックデータを整備している企業が多い。桑の葉の産地は、国産と中国産が大半を占める。国産では、島根県産、福島産の原料が流通量を拡大、有機JAS原料の需要も高まっている。


トヨタマ健康食品
 原料・OEM、最終商品

 トヨタマ健康食品㈱(東京都中央区)は、神奈川県、福島県、埼玉県産を中心に桑の葉を100t確保、自社ブランド商品の販売から原料・OEM供給までを手掛ける。同社では、有効成分の高含有原料の開発、味・においの改善など、桑の葉の研究・開発を積極的に行う。また、トクホ取得を視野に、研究機関、大学と提携し、食後血糖の抑制を中心に、独自の研究データを蓄積している。血圧、コレステロールについても研究成果を得たことから、今後は「メタボリック対応素材としての提案も強めていく」方針だ。ヒトを対象にしたメタボリック関連のデータも現在準備中で、近々にも発表する予定だという。
 原料供給については、エキス、粉末、茶葉原料をラインアップ、サプリメント用途で好調に推移するほか、飲料、一般食品でも提案している。桑の葉単体での提供のほか、カシアノールと組み合わせることで、リパーゼ阻害作用を向上させたブレンド品の原料・OEM供給にも対応している。最終商品については、青汁タイプの『まるごと青汁』、顆粒タイプの『桑葉』、タブレットタイプの『DNJ』を百貨店、通販、薬系ルートで展開。茶製品に関しては、独自の加工技術を活用することで、「冷やしてもおいしい」点が特長だ。今後は、DgS用の商品など、各ルートにマッチした新商品開発を推進していく。


ミナト製薬
 OEM、最終商品

 ミナト製薬㈱(東京都中央区)は、粉末青汁の『減肥くわ青汁』、粒タイプの『減肥くわ青汁・粒々』、お茶タイプの『減肥くわ茶』などの自社ブランド製品を揃え、OEM供給にも対応している。自社製品販売、OEM供給ともに伸長している。主力商品の『減肥くわ青汁』は独自のスチームブランチング製法により桑葉の有用成分を損なわずに製品化している。また、分包への窒素充填で従来よりも一層の品質保持を図ったほか、粉末の粒度を均一化することで飲みやすくしている。最近は、有機JAS認定の桑葉製品のOEM供給も開始。同社は、国内に自社管理の大規模な有機農場を有し、そこで有機栽培される桑葉は有機JAS認定を得ている。同社工場では有機JAS加工食品の認証を取得しているため、栽培から最終商品化まで国内における一貫生産体制を構築している。また同社では産学官連携の研究プロジェクト(農水省助成事業)を推進しており、1-デオキシノジリマイシンを高含有する桑葉製品の開発と有効性、安全性の検証を進めている。


日本粉末薬品
 原料・OEM

 日本粉末薬品㈱(大阪市中央区)は、桑の葉(国産および海外産)の安定供給体制を構築。有機JAS取得の自社3工場での設備を活用し、殺菌粉末、抽出液、エキスパウダーなど、各剤形での提供が可能だ。サプリメント用途を中心とした安定した引き合いに加え、一般食品での採用も進んでいる。
 同社が取り扱う桑の葉原料は、ポジティブリストに対応するほか、微生物、貴金属、ヒ素を規格設定するなど、安全性対策が徹底化されている点が特長。ニーズに応えて、有機JAS取得の桑の葉原料の供給も可能だという。
 同社では、桑の葉単体のほか、タラの芽、オリーブ、バナバ、グァバなどとの組み合わせによる提案も推進する。また、漢方原料サプライヤーとして培ってきたノウハウを活用した独自処方での提供も行っている。
 同社は、欧州、アジアの約70社からの原料仕入れルートを確立、和漢薬原料600種以上、各種ハーブ原料をラインアップする。「供給と品質の安全」をテーマに事業展開を図り、医薬品分野をはじめ、健康食品、化粧品、部外品など、幅広い分野への販売実績を持つ。


国際友好交易
 原料・OEM、最終商品

 ㈱国際友好交易(東京都千代田区)は、福島産の桑の葉にドクダミをブレンドした顆粒製品『桑のしずく』を会員販売ルートで展開する。同商品は、自社工場の㈱国際漢方研究所(福島県二本松市)で生産したもの。「顆粒状で摂取しやすい(水なしでの摂取も可能)」「形態に便利な軽量スティックタイプ」「ケミカルな添加物」を含まない――などの点が特長。血糖値上昇抑制、便通改善の両面からのダイエット効果を訴求している。今後は、桑の葉を配合した一般向け商品の開発も進めていく方針だ。
 また同社では、原料・OEM供給に本格的に着手する。原料販売については、福島県産の桑の葉の安全供給体制を構築。OEM供給では、自社工場での生産設備を活用し、瓶飲料を中心に対応していく。また、瓶充填の委託業務も行い、「ニーズに応じ、ライン増設も検討していく」としている。


桜江町桑茶生産組合
 原料・OEM、最終商品

 農業生産法人(有)桜江町桑茶生産組合(島根県江津市)では、約20haの農園を有し、有機JAS認定の桑の葉を栽培。自社工場の加工ライン(低温乾燥、加熱蒸気加工、ブランチング加工、焙煎、ティーパック加工)を活用し、最終商品の販売から原料・OEM供給までを手掛ける。最終商品については、「有機茶葉」「有機桑青汁」「有機桑葉つぶ」を開発、百貨店、生協、通販ルートで展開している。
 原料供給については、粗粉末、微粉末、顆粒、茶葉原料など、全て有機JAS取得の桑の葉原料を提供。(有)高橋慧食品研究所が提供する特許技術「植物の完全単細胞化製法」を用いることで、吸収性・体感性の向上を図った点が特長だ。年間供給量は自社消費も含み20t(乾燥葉換算、前年比160%)と好調に推移しており、有機桑園を毎年2ha拡大。工場周辺の桑園を拡大することで、1日の処理能力UPを図っている。
 同社では、「有機やトレースのとれる安定した品質を求める企業が増えてきた。青汁のブレンド原料として使用されることも多い。」としている。05年には農業生産法人「有機の美郷」を設立、桑の葉をはじめ、大麦若葉、ハトムギ、ケールなど、青汁加工用有機JAS原料の調達地を拡大している。

龍泉堂

 ㈱龍泉堂(東京都豊島区)は、『桑オニオン』を販売する。桑の葉とタマネギの併用による臨床試験の研究成果を元に開発、30粒中に桑の葉エキス約2,700㎎(桑の葉約33枚分に相当)を含有する。「桑の葉の食後血糖の抑制作用」と「タマネギのインスリン抵抗性の改善作用」を併せ持つ点が特長。

黒姫和漢薬研究所

 ㈱黒姫和漢薬研究所(長野県上水内郡)は、ティーパックタイプの『野草茶房くわ茶』を販売、専門店などで展開する。同品は、日常のお茶として毎日楽しめるよう、独自の焙煎加工でほうじ風味に仕上げているのが特長。有用成分を最も多く含む夏に葉を採取した原料を使用。 

ピーエス
 ㈱ピーエス(東京都千代田区)では『桑青汁おいしい緑』を販売している。同品は桑の葉に大麦の若葉、有胞子乳酸菌を加えた顆顆タイプ製品。同社によると「抹茶ではなく大麦若葉を使用したのは、体を冷やす性質を有している青汁に対し、体を温める性質の大麦の若葉を配合することでその性質を軽減するため」という。販路は、通販のほか、専門店、百貨店、クリニック。従来は主力のコラーゲン製品とセットでの購入する女性の購入者が圧倒的に多かったが、男性利用者も増えているという。

サイシン

 ㈱サイシン(京都府京都市)は、京都工芸繊維大学桑園産の桑粉末原料を供給している。特殊製法により栄養成分の劣化が少なく、味質が良好な点が特徴だという。ダイエット、メタボリック対応素材としてのほか、腸内環境改善サポート素材としても、乳酸菌原料とともに販売を進めている。

農業経営研究所

 (有)農業経営研究所(埼玉県さいたま市)は、島根県邑智郡桜井町で有機農法により生産された桑葉を原料に、高橋慧食品研究所の特許技術で単細胞化し製品化した『単細胞化桑葉粒』を販売している。同社は農家の活性化など地方自治体のプランニング事業を展開する企業。桑葉に関しては3年前サプリメント事業部を立ち上げスタートした。


島根県に特許技術を提供 「単細胞化桑葉」のバルク供給を推進

高橋慧食品研究所

 島根県では、「健康食品産業創出プロジェクト」を打ち出し、桜江町で有機栽培される桑葉による地域振興を目指している。島根県と技術提携し、特許技術「直物の完全単細胞化製法」を提供したのが(有)高橋慧食品研究所(東京都千代田区)だ。同社の技術指導の下、桜江町では、「単細胞化桑葉」を製造、茶、青汁、錠剤など、さまざまな形態の桑サプリメントを上市している。
 (有)高橋慧食品研究所では、島根県桜江町で栽培される有機JAS認定の桑葉を原料に素材化した「単細胞化桑葉」の原料・OEM供給に注力。サプリメントから一般食品まで、汎用性の高さを武器に、幅広く用途開拓を進めている。「単細胞化桑葉」は、「植物の完全単細胞化製法」を活用し、酵素で植物細胞ひとつひとつを単細胞化することで、有効成分の劣化・損失を防止。さらに、吸収性・体感性向上を図った点が最大の特長だ。
 島根県産業技術センターと島根大学医学部との共同研究では、桜江町の桑葉には、ポリフェノールの1種「クエルセチンマロニルグルコシド」が豊富に含まれていることが見出されている。また、動物実験では、抗動脈硬化作用、コレステロール低下作用が確認されるなど、研究データが豊富な点も強みとなっている。
 なお、「植物の完全単細胞化製法」は、人参、タマネギ、ニンニク、大豆など、さまざまな植物に応用可能。一部の可溶性成分を抽出するエキス化と比較し、“素材を丸ごと利用”することができる。


トピックス
抗糖尿効果に着目した研究発表が目立つ桑の葉。「日本農芸化学会2007年度大会」では、桑の葉の特有成分・1-デオキシノジリマイシンの体内動態についての研究成果が発表された。その要約を紹介する。


「血糖低下効果のある桑葉デオキシノジリマイシンの体内動態の解明」
 東北大院・農・機能分子解析  久保田啓之、宮澤陽夫ら


【目的】桑葉は、糖尿病予防が期待されるα-グルコシダーゼ阻害作用のある、1-デオキシノジリマイシンを多く含む。桑葉を糖尿病予防食品へ展開する上で、1-デオキシノジリマイシンの吸収と代謝に関する理解が必須である。そこで本研究は、ラットにおけるDNJ の体内動態の解明を目的とした。

【方法と結果】LC-MSで1-デオキシノジリマイシン標品を分析すると、検出限界は500pgと高感度であった。1-デオキシノジリマイシン標品を通常ラット血漿に添加し、血漿1-デオキシノジリマイシンを定量するための標準曲線を作成した。桑から精製した1-デオキシノジリマイシン30㎎をラットに経口投与し、投与前と投与30、60、120分後の血漿を調整した後、LC-MSで測定した。ラットに経口投与した場合、血漿1-デオキシノジリマイシン濃度は投与30分後に最大(15μg/ml)となり、その後減少した。以上より、ラットに経口投与された1-デオキシノジリマイシンの一部は、消化管から吸収され、血中に移行すると考えられた。LC-MS/MSを用い、本法と共に異なる高感度選択的な分析法を開発した。