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クワ葉の薬効
(ヘルス研究所発行「ヘルス文庫」より抜粋・大山武司著)


1.クワ葉のすぐれた成分

 クワの葉の薬効とその利用については、現在、神奈川県の研究機関である衛生研究所、ガンセンター、蚕業センター、栄養短期大学などが共同で研究を進めています。
 蚕業センター技術研究部蚕桑料の有賀勲科長によりますと、クワの葉の栄養分析の結果において特徴的なことは、食物繊維が豊富であるということ。生のクワの葉の食物繊維含有量は14.5%と高く、野菜類の比ではありません。
 さらに、カルシウムや鉄分も多量に含まれています。有賀科長らの分析によりますと、クワの葉の乾燥粉末中のカルシウムはキャベツの約60倍、鉄はカブの約150倍という豊富さです。
 そしてビタミン類がAとB1、カロチン、エルゴステロール、フラボノイド類のルチンなども含まれています。また、血圧降下作用を発揮するガンマーアミノ酪酸も多く、成人病対策に大いに期待できそうです。
 血圧や血糖値が高いと、疲労感、だるさ、めまいなどの不快症状が起こります。根気が続かないので仕事もはかどりません。
 クワの葉の成分は、血圧、血糖値ともに正常に保つ働きを持つため、クワの葉茶を常飲して糖尿病のコントロールに役立てている人も増えています。
 元東北大学薬学部の今野助教授の報告によりますと、血糖を下げる作用は、クワに含まれる多糖類の「モランA」という成分の働きであるということです。これについては日本生薬学会も昭和59年に発表しています。
 また、東邦大学薬学部の野村太郎教授は、クワに含まれるクワノンG、クワノンHという成分にも血圧を下がる効果があることを発表しました。
 降圧剤の服用で効果が出なかった高血圧患者でも、クワの葉茶によって数カ月で正常血圧に落ち着いたというケースもあります。


2.クワの葉はガンなどの成人病対策のエース

 クワの葉の血圧降下作用は、動物実験でも立証されています。
 神奈川県衛生研究所食品薬品部の堀口佳哉部長らの研究報告によりますと、高血圧のラットにクワの葉を与えると血圧が抑えられるということです。
 この効果は、血圧を上げる薬剤を与えられたラットにまで認められました。また、正常な血圧のラットの場合は、クワの葉を摂取しても血圧に変化は見られないと判明しました。
 次に、コレステロールの問題ですが、同じく堀口部長らの実験では、高コレステロール・高脂血症のウサギにクワの葉を与えた結果、コレステロール値が正常化しました。脂肪肝の予防策にもなるということです。
 そしてこれらの効用は、クワの葉をじかに食べずに、クワの葉茶として服用しても期待できるということです。
 このようにクワの葉の薬効は、現代人の成人病に頼もしい味方となることが実証されています。
 現代医学でもまだ完全に克服されていない病気と言えば、やはりガンが筆頭にあげられます。この点でも、クワの葉は大きな期待を寄せられています。最近、クワの葉の持つ「発ガン抑制効果」が明らかにされたのです。
このことは、神奈川県の研究機関で1990年から始まった機能性食品の研究の中間報告で発表されました。この研究では、さまざまな食品が持つ健康増進効果を調べています。
 その結果、クワの葉には発ガン物質を抑制する成分が含まれていること、その他、血圧、肝臓の脂質蓄積、糖吸収などに抑制効果がみられ、成人病予防に有効であることが判明しました。
 また、クワの葉は天然着色料としても鮮やかな発色が得られることがわかり、今後、生めんや菓子類への応用が予定されています。


3.クワの葉茶の効用いろいろ

 クワの葉の乾燥したものをお茶として利用する方法が、最も手軽に薬効を得られるとあって最近ブームを呼んでいます。
 前述の血圧降下作用はもちろん、動脈硬化、脳出血、脳軟化症、糖尿病、口の渇き、のぼせ、頭痛などにも有効です。
 また、クワの葉茶には補血効果もあり、新陳代謝を促し、神経炎を抑え、脚気などからくるムクミを解消し、食欲を増進させます。利尿効果や、便通を整える働きもあります。クワの葉茶を飲むようになってから、風邪をひかなくなったという声も多いようです。
 クワの葉に豊富に含まれるカルシウムの働きで、歯や骨が丈夫になるという利点もあります。クワの葉を塩もみして、痛む歯にすりこむという民間療法も尾張地方に伝えられています。
 薄毛や脱毛で悩んでいる人は、クワの葉茶を濃く煮出し、頭皮にすりこめば抜け毛の予防にもなります。
 さらに、クワの葉のお茶以外の利用法としては、粉状にした葉をゴマ油で練って、火傷の部分に塗ると効果が得られます。
 また、炒った黒ゴマを粉にし、クワの葉とともにハチミツで練って丸めたものを酒で服用する方法もあります。動脈硬化や脳軟化症の予防に有効です。


4.漢方薬としてのクワ

 漢方の世界でのクワの生薬名は、根の皮が「桑白皮」(そうはくひ)
、葉が「桑葉」(そうよう)、果実は「桑椹」(そうじん)となっています。
 かつての日本では、主に桑白皮を薬用に利用していました。桑白皮には桑葉と同じく、血圧を下げる作用があると昔から言い伝えられています。
 桑白皮が配剤されている漢方薬は多く、喘四君子湯(ぜいしくんしとう)、華蓋散(かがいさん)、清肺湯(せいはいとう)その他いろいろあります。消炎、利尿、鎮咳、去痰効果があり、ぜんそくや気管支炎、百日咳など気管や肺の症状に有効です。
 桑白皮が人間の体に働きかける作用は強く、そのぶん効果は高いようですが、人によっては体質に合わないこともあります。体を冷やす作用もあり、どんなタイプの人にも合うというわけではないので、薬剤師に相談することが大切です。長期間の服用にも向いていません。
 その点、クワの葉の場合は効き目がもっと穏やかで、副作用もなく万人向きであり、体質を選びません。健康飲料として、ずっと飲み続けても大丈夫です。
 本書の主題は、クワの葉ですが、クワの実も熟すと初夏には紫色になり大変おいしい実です。そして、実にも薬効があり、昔から広く利用されてきました。
 あとでものべてまいりますが、桑の葉はすごい薬効の宝庫で、本草学の最古の書といわれる『神農本草経』のも取りあげられ、それぞれの薬効について具体的に紹介されており、今注目の生薬です。