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桑葉の食品機能

学会誌 FOOD FUNCTION 第3巻 第2号 1-13(2007)総説

桑葉の食品機能
八並一寿

玉川大学農学部生命化学科准教授
昭和薬科大学研究員
中国浙江省浙江中医薬大学客員教授

要 旨

桑葉の食品機能を概説した。桑葉の機能成分は、微量成分として、クロロゲン酸、ルチン、クエルセチンとその配糖体、アス トラガリ、γ-アミノ酪酸、新規2-アリールベンゾフラン化合物、フラボノール配糖体、イソフコステロールが知られ、クロロフィル、ビタミンCが多い。フ ラボノイドの主要成分は、イソケルセチン、アストラガリンで、カルシウム、カリウム、鉄などのミネラルに富む。桑葉の抗血糖成分は、1-デオキシノジリマ イシン(DNJ)や、ポリヒドロキシアルカロイド、モラシンMやムルベロフランU、ファゴミンで、この他桑葉は、ヒト低密度リポタンパク質(LDL)の酸 化を強く抑制する新規プレニルルラバン類、ビタミンKを含む。桑葉粉末は、乾物当り0.03~0.2%前後のDNJを含む。桑葉の安全性は、ヒト、ラット で検討され、毒性は認められてない。

桑葉の臨床試験では、空腹時血糖値、ヘモグロビンA1cの改善が報告されている。桑葉には、以下の食品機能が知られてい る。内分泌・代謝異常の予防効果として、糖尿病、高脂血症、肥満症に対して有効性が報告される。血圧・血管の病気の予防として、高血圧、動脈硬化、血栓症 に対して有効である。感染症の予防として、インフルエンザ、エイズに効果がある。ラット化学肝発癌モデルより、肝がんに効果がある。便秘改善効果、抗酸化 作用、α-グルコシダーゼ阻害作用を示す。

桑葉は、皮膚美白剤、めまいの民間薬として利用され、桑葉由来のγ-アミノ酪酸(GABA)には、神経保護作用がある。各種の桑葉の機能性の強化法や、機能性の高い桑品種、機能性の高い桑茶の製造法などを紹介した。

Ⅰ.桑について

桑 はイラクサ目クワ科の落葉樹で、日本の山野に自生し、ヤマグワは高木となるが、養蚕用の栽培グワは年々枝を刈り取るので、低木状である。栽培クワの品種は 100種以上あり、多くは次の3系に属する。①ヤマグワ系;北陸から東北地方に多く、赤木、島の内、遠州高助、剣持など、②カラヤマグワ系(ハクソウ;白 桑)系;中国、朝鮮原産のマグワ(シログワ、トウグワ)に由来しカラグワ(唐桑)ともいわれ、改良鼠返、一ノ瀬など、③ログワ(ロソウ;魯桑)系中国原産 のログワ(マルバグワ)に由来し、西日本に多く、魯桑などが知られる。


Ⅱ.歴史

1~2 世紀頃に著され、365種の植物を分類した、中国最古の薬物学書で紀元1~2世紀の著作とされる『神農本草経』では、植物を上薬(不老長寿薬、いくら食べ ても毒性なし)、中薬(主に病気を治す薬、素晴らしい働き)、下薬(劇薬、起死回生の働き)に分類している。その中で桑葉は、中薬として収載される。わが 国に養蚕が伝わったのは1~3世紀頃といわれ、『古事記』や『日本書紀』にも、桑の記載がある。栄西が今から約800年前に著した『喫茶養生記』では、桑 の葉を服する方法として、4月初めに採って陰干にして、秋の9月~10月に、桑が三分の二落ちた段階で採り陰干にして、混合後粉末としてお茶のように服す れば、お腹に良く、身心も軽く利があるとされる。


Ⅲ.機能成分

1、微量成分

桑 葉の微量成分には、クロロゲン酸、ルチンおよびクエルセチン、クエルセチン配糖体、アストセガリン、神経伝達物質であり血圧降下作用を示すγ-アミノ酪酸 (GABA)、新規2-アリールベンゾフラン化合物、フラボノール配糖体イソフコステロールが分離されている。桑葉は、一般の野菜に比べクロロフィル、ビ タミンCが多い。フラボノイド画分の主要成分は、イソクエルシトリン、アストラガリンである。桑葉は、カルシウム、カリウム、鉄などのミネラルに富み、と くにカルシウムはいわし丸干しやしらす干しより多く、牛乳の約25倍に相当する量を含む。抗血糖成分には、ブドウ糖に類似の構造を持ち、当初モラノリンと 命名された1-デオキシノジリマイシン(DNJ)や、ポリヒドロキシアルカロイド、モラシンM(I)やムルベロフランUおよびIの3’-O-β-D-グル コピラノシド、解糖系のある段階を加速したインスリンの分泌を促進するファゴミン、ヒト低密度リポタンパク質(LDL)の酸化をケルセチンよりも強い活性 で抑制する新規のプレニルルラバン類が知られる。ビタミンKは、血液中のプロトロンビンなどの血液凝固因子の産生にかかわるビタミンであるが、桑葉の含量 は、モロヘイヤ、明日葉、ケールの倍以上である。桑葉は、緑黄野菜(ホウレンソウ、アマランスなど)より蛋白質、βカロチン、鉄含量が一般的に消費される 野菜より多く、亜鉛、カルシウム及びアスコルビン酸が豊富である。


2、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)

桑 葉粉末(乾物当り)のDNJ含量は、0.03~0.2%前後で、中国産と日本産で大きな相違はないと考えられる。3品種の桑葉のDNJ量を調べた結果、 0.1~0.13%前後で品種により差がある。加工品では、桑茶が0.05以下~0.23%、タブレットは0.28~0.48%で比較的含量が高かった。 最もDNJ含量の高い加工品は、桑茶エキス入りプロポリスであり、その製品中の含量は2%である。DNJは、マウス小腸の二糖類分類酵素を阻害し、桑では 漢方薬として利用される根、葉、実にも分布する。DNJ投与で、糖尿病マウスで用量依存的に血糖降下作用が見られた。桑葉エキスを、ガン手術で4人の患者 から切除された小腸の罹患していない部分を用いて調べた結果、シュクラーゼ(96%)、マルターゼ(95%)、イソマルターゼ(99%)、トレハラーゼ (44%)、ラクターゼ(38%)の活性を阻害するが、桑葉を食品に利用する場合は糖の種類に注意を要する。


Ⅳ.安全性

桑 葉を4週間、ラットに反復経口投与したところ、雌雄ラットの体重、摂餌量、摂水量、器官重量や白血球分画、生化学的検査値の成績において、対照群と差はな く、健康への障害をもたらす可能性は低い。桑葉抽出物を、90日間ラットに反復投与した毒性実験でも、雌雄とも体重および一般状態に特記すべき変化を認め ず、桑葉抽出物の毒性は認められない。ヒトでの長期摂取による安全性試練では、被験者18名に推定有効量の桑葉粉末(5.4g)含有食品を12週間連続摂 取させても臨床的な問題はみられない。正常血糖値成人5名、耐糖能異常者8名に、1回1.8gの桑葉粉末を1日3回、食前に3ヵ月間服用しても、全例で診 断所見、自覚所見の有害事象は見られない。なお桑葉エキスは高用量において、ラット小腸のチトクロームP4503A(CYP3A)活性を、一過性に亢進さ せるが、グレープフルーツジュース、甜茶、グァバ茶のようにCYP3Aを阻害しない。
Ⅴ.臨床試験

血 糖値が高め(102~147mg/dL)な被験者10名に、1回1.8gの桑葉を食前または食後に1日3回、4週間摂取させたところ、空腹時の血糖値 (FBS)が有意に低下し、9例のヘモグロビンA1c(HbA1c)高値(平均7.6)の糖尿病患者のうち、6例に桑葉との併用で明らかなHbA1cの改 善を認めた。1粒中に100mgの桑葉エキス含有したエキス粒を、糖尿病患者12例に、朝食前、夕食前の2回に6粒ずつを、16週服用したところ、12例 中10例で明らかに食後2時間の血糖値が低下し、12例中8例でHbA1cの低下、または改善傾向が認められている。桑茶エキスを配合したプロポリスの服 用は、糖尿病予防に効果的で、2型糖尿病患者12名に、1日3回、1回に0.7mlを1か月の服用することで、空腹時血糖値(FBS)を73mg/dL、 HbA1cを0.8%低下させる。健常者7名と糖尿病患者6名に、桑の葉エキス800mgを毎食前に4週間投与したところ、体重は1.05kg減少、 HbA1cを0.3%減少、FBSを16mg/dL低下させた。


Ⅵ.桑葉の食品機能

1、内分泌・代謝異常の予防

1)糖尿病
①動物実験
  ストレプトゾトシン糖尿病マウスで、血糖降下効果を示し、自然発症糖尿病ラットの発症以前より、桑葉を摂食させると、糖尿病の発症遅延並びに病態の重症化 を抑制する。アロキサン誘発糖尿病マウスの血糖を、有意に減少させるが、正常血糖マウスには影響しない。ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病犬に対して、 血糖上昇抑制効果を示す。

②ヒト

単回投与試験では、健常ボランティア1群6名に、DNJ量として、0、3、6、9mg含有製品を1日3回食前投与したところ、糖負荷後の血糖値とインスリ ンの上昇が共に抑制され、長期投与試験は、1群6名にDNJ量として、0、9mgを4週間、1日3回食前与えたが異常を認めない。

③作用機序

骨格筋のglucose uptakeの促進、ピロカルピンによる唾液分泌増強作用、ファゴミンは、正常ラットすい潅流において、グルコース刺激によるインスリン放出の促進、マウ スの血漿インスリンレベルを上昇させる。インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)ラットであるGKラットで、インスリン抵抗性を改善する。1型糖尿病 (IDDM)モデルNODマウスでの発症の遅延は、フラボノイドなどの抗酸化性を示す成分によるβ細胞の保護効果を含む複合的作用で、ポリフェノールが摂 取後過血糖値抑制に対して相乗的に作用する。腸上皮中では、細胞分裂により成長と脱落が繰り返される、α-グルコシダーゼが常に活性化されているが、この 活性を阻害するためには、DNJの投与が有効である。STZ誘発糖尿病ラットの視床における一酸化窒素シンターゼ発現を減少させ、糖尿病条件下の食欲減少 に有効である。自然発症2型糖尿病モデルラット(OLETFラット)での検討より、耐糖能障害を持った個体の微量元素欠乏を効果的に補給するので、インス リン分泌機能の保持または、インスリン作用の改善作用がある。正常ラットでの、食後高血糖症に及ぼす影響の検討より、小腸由来のジサッカリダーゼ活性の阻 害により、炭水化物負荷後の食後高血糖症を強く抑制する。ラットに経口投与されたDNJの一部は、消化管から移行して血中に移行する

2)高脂血症
①動物実験
 桑葉の複数成分が、ウサギでの血清脂質増加抑制効果、肝臓への脂肪沈着抑制効果を示す。鉄欠乏ラットにおいて、桑葉摂取は血清トリグリセリドレベルを低下させる。

②ヒト
 糖尿病患者のコレステロールを12%、トリグリセリドを16%、LDLコレステロールを23%、VLDLコレステロールを17%、遊離脂肪酸を12%低下させる。

③作用機序
コレステロール食投与ウサギの高脂血症改善作用は、複数成分によると考えられ、フラボノイドのイソケルケチン、セルセチン、アストラガリンなどによる。 ラットの脂質代謝を改善は、コレステロールの吸収抑制効果を持つ、植物性ステロールであるシトステロール、およびスチグマステロールが総コレステロール上 昇の抑制、食物繊維によるコレステロールの低下作用、カロチノイドやフラボノイドなどの抗酸化物質により、過酸化脂質の上昇が抑制される。

3)肥満症
①動物実験
  ショ糖投与で内蔵脂肪を増加させたラットに、桑茶を投与し腸管内臓脂肪の影響を検討したところ、腸管膜脂肪量、血中中性脂肪が対照レベルまで低下した。 30%桑葉摂取は、卵巣摘出ラット(更年期女性モデル)の内臓脂肪分布を有意に減少する。ddy雄性ラットに桑葉抽出物を与えたところ、体重増加の抑制が 見られた。

②ヒト
 桑葉カプセル(262mg)を食前に4週間服用すると、18日から21日目に飲用前から2~2.5kg体重減少した例がある。肥満傾向者15名に毎食時2g、2か月間投与したところ、ウエストサイズが約4%減少した。
1- デオキシノジリマイシン等の含窒素化合物は、α-グルコシダーゼ阻害作用を有し、糖吸収抑制や肥満予防作用を示す。また桑葉に含まれる、コンズリトール A(ギムネマシルベスタの葉に含まれる)は、腸管からの糖吸収抑制作用があるので、血糖値上昇抑制作用を示し、過血糖による肥満防止作用がある。

2、血圧・血管の病気予防

1)高血圧症
①動物実験
 γ-アミノ酪酸の増強を行った桑葉を、自然発症高血圧ラットに、24週間及び10週間の連続給餌で、血圧抑制効果が見られた。赤血球浸透圧抵抗性の改善効果がみられた。

②作用機序
 血球膜改善作用とγ-アミノ酪酸の直接の作用である。

2)動脈硬化症
①動物実験
コレステロール食ウサギでの、胸部大動脈の血管肥厚が桑葉食添加で抑制された。桑葉は、動脈硬化モデル動物アポEノックアウトマウスによる病変解析、ウサ ギLDLの酸化変性解析より、抗動脈硬化作用があり、大動脈基始部の動脈硬化病変面積はコントロール群に比べて、約60%に低下した。高脂肪食給餌ラット において、桑茶や桑葉を投与した群では、血清生化学値より計算される動脈硬化指数が有意に低くなった。桑葉水抽出物(MWE)添加通常食、高脂肪食を実験 的アテローム性動脈硬化症ウサギに10週間投与したところ、投与は大動脈の重度アテローム性動脈硬化症を有意に軽減した。

②作用機序

桑葉抽出物は、血管内皮細胞におけるレクチン様LDL受容体(LOX-1)の発現を阻害することによる。低密度リポ蛋白質(LDL)の酸化は、アテローム 発生に関係する。桑葉の1-ブタノール抽出物と、その主成分、イソクエルシトリンは、ウサギおよびヒトLDLの銅誘発酸化的改質に対し、共役ジエン生成と チオバルビツル酸反応物質生成を阻害し、抽出物とイソクエルシトリンはLDL酸化を防止し、動脈硬化症を予防する。ヒトLDL酸化防止の有効成分は、3フ ラボノールグリコシド[ケルセチン3-(マロニルグルコシド)]とルチンである。3(6-malonylglucoside)(Q3MG)に主に起因し た。桑葉、Q3MGを含む食事は、LDLの酸化抵抗性とアテローム傷害予防機能を上昇させる可能性がある。Q3MGのアテローム傷害予防の可能性が、ネズ ミで研究4グループ(コントロール、ケルセチン、Q3MG、桑)で検討され、LDLの酸化はQ3MGと桑でかなり減少し、桑葉の主要な抗LDL抗酸物質は Q3MGである。

3)血栓症
①動物実験
 正常ウサギや高コレステロール負荷ウサギに、桑葉を静脈内投与すると、血小板凝集能が抑制され、プラスミン活性が増強する。糖尿病ラットでは、プラスミン活性及び赤血球浸透圧抵抗を改善する。

②作用機序
正常状態では、桑葉は線溶能を活性化せず、線溶系活性の予備能力を高めるが、高脂血症では、高脂血症の状態改善と同時に、線溶系活性の予備能により、血液の流動性の低下を防止するが、凝固能には影響をおよぼさないので、出血傾向になる危険性は低い。


3、感染症

DNJ は、小胞体のα-グルコシダーゼⅠとⅡを阻害し、糖タンパク質のプロセシングを阻害するので、ウイルス表面のエンベロープタンパク質が合成されず、ウイル スの複製が出来ないので、C型肝炎ウイルス、テング出血熱ウイルス、牛ウイルス性下痢症ウイルスなどに抗ウイルス性を示す。

1) インフルエンザ
桑葉の生物活性として、インフルエンザウイルスの感染抑制作用がある。DNJは、インフルエンザA型ウイルスのプラーク形成活性を低下させ、抗インフルエンザ作用がある。DNJは、ヒトに対して最も病原性が強い、ヒトパラインフルエンザウイルス3型に対して著効である。
2)エイズ
HIVは、主にCD4陽性リンパ球(ヘルパーT細胞)に感染し、リンパ球の機能と数を徐々に低下させる。CD4陽性リンパ球は、細胞性免疫系の中心的役割 を持ち、HIV感染により体が高度の細胞性免疫不全の状態となる。DNJは、小胞体に存在するα-グルコシダーゼⅠとⅡの阻害を介して糖タンパク質のプロ セシングを阻害して、複合オリゴ糖の高次構造を形成させない。したがってHIVウイルスが、リンパ球への感染の際CD4の部位に付着するための糖鎖 gp120の生合成を阻害するので、HIVはリンパ球に融合できない。桑葉から単離されたDNJにも、HIVウイルスのリンパ球への融合阻止作用が確認さ れている。


4、がん

①動物実験
 ラット化学肝発癌モデルより、桑葉経口投与は肝腫瘍の個数・面積の両方を減少させ、肝癌高発癌系マウスを用いた実験では、肝癌の発生を減少・遅延させる効果が示唆された。

②作用機序
ヒ ト又はほ乳動物の培養細胞を用いた染色体異常試験法及び体細胞突然変異試験法にて検討した結果、発癌抑制の機序は、染色体や遺伝子突然変異の抑制による。 Ames試験での、変異原性物質に対する抑制効果はクロロフィル類が、マウス骨髄小核試験での変異原性抑制効果は、ケルセチンの体内量の増加による。桑葉 70%エタノール抽出物は、ヒト前骨髄性白血病HL-60細胞に対し、濃度依存的に増殖を抑制し、アポートシスの重要な指標カスパーゼ-3の活性化、 DNAラダー形成、アポートシス小体の形成が見られたので、アポートシスを誘導する。桑葉より分離した、2種のフラボノイド(クエルセチン-3-O-β- D-グルコピラノシド、クエルセチン-3、7-ジ-O-β-D-グルコピラノシド)はHL-60細胞株の成長を抑制し、後者はHL-60の分化誘導、 CD66bおよびCD12抗原を発現させる。

5、便秘

桑 葉添加飼料を給餌したラットは、対照ラットと比較して腸内フローラの有害菌が抑制される傾向があり、腸内フローラに良好に作用する因子を持つ。桑葉給餌 ラットでは、糞湿重量、水分量が増加する。α-グルコシダーゼ阻害作用により、小腸で吸収されなかった糖質は、大腸で糖質の吸湿作用で軟便となり、発酵に よるガスにより腸蠕動により、便が排泄されやすくなり便秘が改善される。

6、抗酸化作用

豚 脂に桑葉を加え、経時的に過酸化物価及びチオバルビツル酸価を測定したところ、抗酸化能を認めた。メタノール抽出物は、顕著な抗酸化活性を示し、その活性 はα-トコフェロールより強く、BHAと同等である。DPPHラジカル補足活性を持つ9つのフラボノイドが同定されている。桑葉の少なくとも4種フラボノ イドが存在し、そのうち2種は、ルチンとクエルセチンで、桑抽出物のスーパーオキシド消去活性は、ルチンよりも強い。

7、α-グルコシダーゼ阻害作用

ラッ ト小腸粘膜のマルターゼ及びラクターゼ活性を阻害し、特にサッカラーゼ活性を強く阻害する。DNJを含めたポリヒドロキシル化アルカロイドは、ラット小腸 α-グルコシダーゼ以外にゴルジα-グルコシダーゼⅡ、ゴルジマンノシターゼⅠ、Ⅱを阻害した。桑茶、乾燥桑葉、サラシア茶、グアバ茶、バナバ茶のα-グ ルコシダーゼ阻害作用を比較検討したところ、桑茶・桑葉はマルターゼ、シュクラーゼともに他の健康茶に比べて10-200倍阻害活性が強い。12品種の桑 葉のα-グルコシダーゼ阻害活性は、季節や倍数体で阻害活性は異なる。268品種の桑葉のα-グルコシダーゼ阻害活性を調査したところ、阻害活性は 50-70%の範囲で、5月、7月、9月では同一の品種でも採取時期により活性が異なる。

8、その他の薬理作用

桑葉 メタノール抽出物は、in vitroでメラニン生合成過程のドーパを、ドパクロムに変換する美白剤となるチロシナーゼ活性を阻害し、その有効成分はムルベロシドFで、皮膚美白剤と して使用できる可能性がある。マグワ中にチロシナーゼ活性を阻害する、有効成分として、オキシレスベラトロールとマルベロシドAが発見され、持続型チロシ ナーゼ阻害剤として検討された。めまいの民間薬として、桑葉は目が充血し、頭がクラクラするようなめまいに用いる。アルツハイマー病やパーキンソン病など 神経障害は脳におけるγ-アミノ酪酸(GABA)の減少に因る。in vitroとin vivoでの脳虚血に対する、桑葉GABAの神経保護作用は、過酸化水素誘導酸化で障害されたPC12細胞の神経保護作用があり、桑葉GABAは、酸素グ ルコース欠乏誘発脳虚血状態に対するPC12細胞の細胞毒性を低下する。中大脳動脈閉塞脳損傷モデルを用いてin vivo実験で、対照群に比べて脳の梗塞量を著明に減少させ、嫌気的処理がin vivoと同様にin vivo脳虚血に対する神経保護作用を強化した。
Ⅶ.桑葉の機能性強化法

桑葉の乾燥法は、天日、熱風、製茶機、凍結乾燥法では、製茶機が大量かつ効率良く加工でき、産業的にはコストの安い熱風乾燥で十分である。桑茶飲料を試作したところ、GABAは煮出し時間が短い方が多く、無機塩類は煮出し時間、浸漬時間に比例し多くなる。

桑 茶飲料への加工では、製茶加工は1.5cmの裁断が良く、桑特有の香りを抑えるには110℃、20分程度までの火入れが有効で、生茶の裁断は1㎝の製茶形 状が良く、蒸しを加えることで青臭みがなくなり、粗揉をかけることで甘さが増し、荒茶仕上げに110℃、20分の火入れで戻り青臭を除去できる。

単 細胞化桑葉細胞と一般的な方法で乾燥調整された桑葉抽出エキスの抗糖尿病作用を、種々の実験モデルで検討した結果、単細胞化は効果を高める。桑茶の抗糖尿 病活性として、ラットの血糖降下作用から計算された力値は、糖尿病治療薬のアカルボース1錠(100mg)相当量は、マルトースの場合3.3ℓである。

桑葉を家庭用ごみ袋等に入れ、窒素ガスを注入して18時間嫌気処理を行うと、GABA含量は7.7-12.3倍に増加する。
α-グルコシダーゼ阻害活性と抗酸化性は、含水エタノール抽出の方が、熱水抽出より強い。真空凍結乾燥、低温除湿乾燥、熱風乾燥の3方法を試みた結果、GABA含有量は凍結乾燥粉末が最も高かったが、α-グルコシダーゼ活性の阻害は乾燥方法による差はない。

従来の乾燥方法では機能性成分の減少が著しくエグ味も強いが、凍結乾燥処理して得られた、乾燥桑葉をヘキサン中で3時間脱脂して減圧乾固したものは、エグ味が少なく多数のフラボノイド配糖体やDNJを含む。
生桑葉を、低温で短時間の乾燥・粉砕を可能にすることにより、有効成分を有効量で葉中に保持しながら桑葉粉末を製造する方法を用いると、100g中の総アスコルビン酸含有量が400mg以上の粉末が製造できる。

機 能性の高い加工品を製造するには、原料桑葉の機能性を検討する必要がある。高窒素、高アミノ酸含量を示す品種は、しんけんもち、古志織姫など、α-グルコ シダーゼ阻害作用の強い品種は鶏冠桑、万年、安部鶴、玉名鼠返、十文字、千松、あつばみどり、正司、国桑27号、DNJ含量の高い品種は、九紋竜、中澤早 世、あつばみどり、八丈桑、銀竜、通常栽培される一の瀬の4倍のDNJを含量し、調査した34種の中ではDNJ含量が最も高い鶴田がある。

桑葉の採取時期では、9月より6月の新葉にDNJが多く、5月、7月、8月採 取の多数の品種のDNJ含量の平均値でも、4品種の継続測定でも8月が最も多い。品種的には改良鼠返は、多く栽培されるので有用である。DNJは新芽に多 く含まれるので、DNJ量を高める調整加工法は、DNJを高含有する品種、鶴田、はやてさかりを使用し、枝先端部の葉(先端より30cm以内)を、茶刈機 を使用し、8月に採取し、高温蒸気処理後、緑茶用の製茶機や25%エタノールでエキスを抽出する方法が従来製品より、DNJ含量が5~10倍高い製品の製 造が可能である。桑葉粉末製造時に、重曹と食塩を1:1の比率で水の量に0.01~1.0%添加した浸漬水で処理後、高温蒸気処理を95~120℃で5分 間程度行い、乾燥温度を80℃程度とし、桑葉中の水分含量を5%以下とすることで、アスコルビン酸、ルチンおよびイソクエルシトリンが保持できる。

桑 葉に、他の食品成分を配合して機能性を強化した例には、ヒトの食事用に桑葉:小麦粉を1:4とした例、桑葉粉末に、梅肉及び梅仁と、紫蘇葉粉末を調合した 健康食品の例、血糖降下食品として桑葉粉末をアイスクリーム、糖尿病予防食品としてプロポリス、高濃度カテキン、味噌、団子、デザート、ハム・ソーセー ジ、麺、うどん、揚げスナック、クッキー、ぼうろ、チョコレートケーキ、バナバ、タマネギ濃縮物に配合した例などがある。

畜産分野では、 桑葉添加飼料卵のβカロチン量が対照の2倍以上に増加、桑葉添加飼料でのアユ養魚試験において、天然アユに近い養殖アユを作出すのに有効である。ホルスタ インに桑主体の飼料とKing Grass主体の飼料を給与して乳生産量を比較すると、2倍以上の生産量があり、桑は濃厚飼料の代替飼料に十分なり得る。 桑茶の機能性を高める方法には、GABAを増強させた桑茶の製造法として、細断し窒素ガスで嫌気的な処理を行い、さらに24時間萎凋処理する方法、被覆処 理と嫌気処理の組み合わせ加工処理法、嫌気処理と好気処理組み合わせ法がある。桑葉エキスの機能性強化法には、マイナスイオン水での抽出や電解水を含んだ エタノール溶液による抽出法がある。

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